もともと暗かった場所を人工的に明るく照らすことは、周辺の生物の行動や生息分布に変化をもたらします。生物の光周性が乱されることで、自然の生態系を破壊する可能性があると示唆させれています。
渡り鳥は、上空へ向けたサーチライトや高層ビルの窓明かりがあると、その光に引き寄せられ、周りをグルグルと飛び続けることがわかっています。渡り鳥が街灯の明るさで道に迷ってしまったり、ウミガメの赤ちゃんが街明かりに引き寄せられて海へ帰ることができず、大量に犠牲になる事例も起きています。ホタルやカエルなどは暗がりでのみ求愛行動を取るため、繁殖に影響があることが指摘されてます。
街灯のまわりで飛び回ってそのまま命を終える虫は日常の光景ですが、昆虫は光に引き寄せられる種類がいたり、逆に光を嫌って逃げる習性を持つ種類がいます。特に多くの夜行性の昆虫が生息可能域が減少していることは「光害」によるものという指摘もあります。そうして、昆虫が減少することによって、それを捕食するアマガエルやネズミなどの動物も減ってしまう事にもつながっていきます。昆虫が減少すると、植物にも影響を与えます。花粉は昆虫によって運ばれて受粉する植物は、子孫を増やすことができなくなります。もちろん、「光害」の影響が、個体の生育状況にも影響を与えます。植物にとって、日長変化が生育の重要な要素であり、夜間に人工光が当たり続けることによって、イネやホウレンソウの生育阻害、樹木の紅葉・落葉遅延などの事例が報告されています。街灯や店の看板などの光で農作物が生育不良に陥るケースが、全国で相次いでいます。人々の生活に都合が良いからという理由で設けられた街灯が、実は農作物の成長を阻害しているというのは皮肉なことです。 |