森は木の蒸散作用によって夏の気温を低下させたり、地球の気温の変化を緩やかにしたりする働きがあります。 また樹冠(樹木の上部で葉が茂っている部分)による、ちりやほこりの吸収や汚染物質の吸収、防音効果なども備えていて、快適な生活環境の形成に貢献しています。森にはたくさんの役割があります。
1.地球温暖化の防止
地球温暖化は、大気中に存在する二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度が上昇することが原因だと考えられています。森の木々は二酸化炭素を吸収するので、地球温暖化を抑える働きをしています。植物には、半永久的に利用可能な太陽からの光エネルギーを利用して、大気中の二酸化炭素を有機物として固定するという重要な働きがあり、特に樹木は幹や枝などの形で大量の炭素を蓄えています。近年、二酸化炭素などの温室効果ガスが増えたことによって、地球の平均気温が上昇していくという地球温暖化問題に対して、全世界が取り組んでいます。日本の温室効果ガス排出削減の目標達成のためにも、日本の森林を保護することは、地球レベルで貢献することにつながっています。
2.生態系の保護
森には樹木だけでなく、草花やコケといった植物、菌類、微生物、昆虫、鳥類、爬虫類、哺乳類などの様々な動物が生息しています。森林は多種多様な動植物が生息する場所であり、生態系の保護は、結果的に私たち人間が生存していくための土台作りをしてくれています。森は、自然に生きる多様な動植物の生態を守っています。土の養分は川を伝って海に運ばれていき、川や海の生物にも栄養を育んでいます。森が死滅すると、川や海も死に絶えます。全ての生物が自然の生態系の中で絶妙なバランスを保ちながら生きています。森林を守ることは、私たち人間が生きていくうえで大切なことです。
3.災害から守る
森林にある落ち葉や落枝は、土の栄養となり木の根を丈夫にします。丈夫な木の根は大雨の際に山崩れを防ぎます。森林の低層にある草花は、雨水を受け止めるため、雨水の衝撃が直に山肌にあたらないようにする役割があります。山の樹木は、地中にしっかり根を張っていて土や石をつかまえているので、土が流されないよう斜面につなぎとめる働きをしています。山に木が生えていないと、大雨が降った時に山の土が雨で削り取られたり、土や石が流れ出して土石流となり、災害につながる可能性があります。また、山の樹木は台風や潮風など風による災害からも私たちを守ってくれています。
4.水を蓄える
降り注ぐ雨は、森林の木々によって優しく受け止められ、大地に浸透します。森の土は有機物や様々な生物によってスポンジのような構造をしているため、裸地と比べて雨水を地中に浸透させる力が約3倍もあります。雨水はその後、土壌でろ過され、山に貯水され、必要に応じて川や海へと流れていきます。この機能は「水源かん養」といい、干ばつや洪水を防ぐ役目があります。川の水の量を一定に保つ役割もあります。森の土にしみこんだ水は、土の中を通って行く間に浄化されてきれいになり、私たちの飲み水にもなっています。
5.豊かな食材の宝庫
きのこ、山菜など様々な食材を私たちにも恵んでくれています。「フードフォレスト」という言葉がありますが、森は食材の宝庫で、無農薬栽培農業を行うのに適した場所としてとらえられるようになってきました。森には自然の生態系があるため、化学肥料や農薬を持ち込まなくても、優れた土壌のおかげで半永久的に繰り返し生産ができる循環型資源として私たちの生活を支えてくれます。
6.木材資源の宝庫
森林は木材を切り出して、家を建てる際の材料になります。輸入の木材で家を建てるよりも、その地域で育った木材は、風土に合っているため、海外から輸入された建材と比較して、丈夫で腐りにくく、家を長持ちさせることにもつながります。日本の木材を使って住宅を建てることは、私たち人間も自然循環のサイクルに加わることにもつながっており、地域経済を循環させるだけでなく、地球の環境保護にも貢献していることになります。
6.人に安らぎを与えてくれる
森林は、美しい景色、川のせせらぎやすがすがしい空気など、人に安らぎを与えてくれます。精神的ストレスや肉体的疲労を感じている人にとって、森は5感の面で安らぎや癒しを与えてくれる空間であり、また科学的にも樹木が発散する揮発性物質が人間に影響を与えてくれていることが研究によって明らかにされています。
7.人を健康にしてくれる
森の成分は、人を健康にして、長寿をもたらしてくれることがわかっています。このことから最近では、森林浴や森林セラピーなどが注目されています。森林で過ごすことによる健康効果がいくつも、明らかになっていますストレスホルモンが減少し、交感神経活動が抑制され、副交感神経活動が高まり、高血圧が改善され、脈拍数が低下します。NK活性細胞が活性化し、免疫機能が向上し、抗がんタンパク質が増加します。精神が落ち着き、リラックスし、身体の痛み等の自覚症状のも改善します。森に入ることで、自然は直接的に私たちを健康にしてくれます。
8.企業の人材育成
森の中で、自然に触れる体験をすれば、学びに対する意欲向上、または道徳観や正義感の形成につながるというデータがあり、教育の場としての役割も期待されています。近年では、企業が人材育成プログラムを実施するようにもなりました。企業が人材研修を森で行う理由は、会社から離れることで、自分たちを客観的に見られること。何もしないで、ただそこにいるだけで、新しいアイデアが浮かんだり、反省点が見いだせたりすると言われています。チームで山に入って数日間滞在することで、助け合いの精神からチームワークが芽生え、ぎくしゃくした関係性が改善され、人間関係が向上すると言われています。
9.自分と向き合う学びの場
森は、自分自身と向き合う場面としては最も優れた場所です。誰とも話さず、ただ、そこにいるだけで瞑想と同じ効果を生み出します。「静中に動あり、動中に静あり」と言いますが、何もしないことで、頭の中はどんどん回転します。それは、結果的に自分自身を見つめなおすことになります。誰かに強制されるわけでなく、ありのままの自分を客観的に見ることができることで、それは個人の成長を促し、よりよい未来のための、一つの節目になるようです。
10.有事や災害の際の避難場所
日常生活において都会は便利な場所ですが、ひとたび何かが起これば、そこは地獄絵図になる可能性があります。電気ガス水道などのインフラが止まり、交通機関も麻痺し、スーパーやコンビニの棚からは食料がなくなります。しばらくの間は供給もされません。建物も崩壊するかもしれません。たくさんの人たちが行き場を失って狂乱状態になります。日本は災害大国です。いつ何が起こるかわかりません。世界情勢の影響を受けて戦場と化す可能性もゼロではありません。数日間は自衛隊の救援作業も期待できません。生存のためには数日間は自力で生き延びなければなりません。避難所生活を強いられても、そこにも別のトラブルが発生します。避難所は犯罪の宝庫です。山に逃げ込むのが一番安全かもしれません。
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